フォーレ/ヴァイオリン・ソナタ第1番イ長調 作品13
(G. Fauré : Violin Sonata No.1 in A major, Op.13)

フォーレはロマン派の作曲家としては、ブラームスと並ぶ室内楽の大家と申してよろしいかと存じます。とりわけフランスの作曲家としては、その残した室内楽作品のすべてが高い水準を維持しているという点で、突出した存在といえるでしょう。
フォーレは多楽章制の本格的な室内楽作品を全部で10曲書いております。
G.U. Fauré
これらは30歳代から最晩年まで、45年ほどにわたって分布しております。すなわち、室内楽はフォーレの初期から後期まで生涯を通じて書き続けられた重要なジャンルと申さなければなりません。

フォーレの作曲家人生は、16歳のときの歌曲「花と蝶」から始まります。1861年から1875年まで、フォーレは歌曲を中心とする声楽曲のみを作曲しておりました。作品表を見ても、作品1から作品12まで、すべてが声楽曲(大部分が歌曲)で占められております。
この時代、フランスではオペラが最重要ジャンルで、交響曲や室内楽のような古典的正統派の曲種に手を出す作曲家はごく少数でした。ところが普仏戦争敗戦後、サン=サーンスを中心として国民音楽協会が設立されると、伝統的な器楽ジャンルへの関心が高まり、フォーレもその波に乗って室内楽に手を出す気になりました。
こうして1875年、フォーレ初の室内楽として作曲されたのが、このヴァイオリン・ソナタでございます。
曲は翌1876年、フォーレ31歳の年に書き上げられ、1877年に1月に初演され、作曲家自身が驚くほどの成功を収めます。同時に、この曲を皮切りとして、近代フランスの優れた室内楽曲が続々と生まれることになったのでした。

この曲は4つの楽章で構成され、第1楽章では提示部が反復されるなど、一見きわめて伝統的な形式に沿って作られておりますが、ラテン的な官能性をもった半音階的な和声法、みずみずしい旋律性など、非常に魅力的な音楽となっております。フランクの有名なソナタに10年ほど先行しておりますが、音遣いの新鮮さではその軽やかさでむしろ凌駕しているとさえ思えます。

ここでは、この作品をピアノ連弾に編曲して演奏してみました。ピアノのみで演奏されたヴァイオリン・ソナタ、お楽しみいただければ幸甚です。


ヴァイオリン・ソナタ第1番イ長調作品13・全曲連続再生 

 第1楽章:アレグロ・モルト(I. Allegro molto) 
 第2楽章:アンダンテ(II. Andante) 
 第3楽章:アレグロ・ヴィーヴォ(III. Allegro vivo) 
 第4楽章:アレグロ・クァジ・プレスト(IV. Allegro quasi presto) 

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◇背景画像提供:「自然いっぱいの素材集」
◇編曲・MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma