エルガー/威風堂々 作品39
(Edward Elgar : Pomp and Circumstance, Op.39)

エルガーの作品中、もっとも有名なものはなんと申しても行進曲「威風堂々」の第1番ということになりましょう。とりわけ、この曲のトリオ主題は「希望と栄光の国」として英国の第二の国歌とされております。

エルガーが軍隊行進曲として「威風堂々」を作曲したのは1901年。2年前に書いた「エニグマ変奏曲」で一躍話題の人となり、1900年作のオラトリオ「ゲロンティアスの夢」でさらに評価を高めたエルガー。そして「威風堂々」の第1番は、エルガーの名声を決定的なものといたしました。
1901年10月19日にリヴァプールで初演されたのは第1番と第2番で、そのうち第1番は3日後にロンドンで演奏されて大反響を呼びました。
その年に即位したばかりの国王エドワード7世は第1番のトリオを声楽曲にすることを希望し、それに応えたエルガーは「戴冠式頌歌」を作曲、その終曲「希望と栄光の国」にトリオの旋律を使用し、爆発的なヒット曲となりました。

ところで「Pomp and Circumstance」という曲名は、シェイクスピアの「オセロ」の台詞に拠るものですが、この邦訳「威風堂々」は名訳であろうかと存じます。残念ながら、訳者が誰なのかはよくわかりません。

「威風堂々」は全5曲から成る軍隊行進曲集でございます。作品番号は39となっておりますが、作曲年代には幅があり、同時期に一気に作られたものではありません。
第1番・第2番は1901年作、第3番は1905年作、第4番は1907年作、そして第5番はかなり間を置いて1930年作。第3番以降はすべてエルガー自身の指揮で初演されております。
これらに加えてエルガー没後に発見された未完成の第6番がございます。これはスケッチのみで、完成させようという意欲はもはや失われていたのではないでしょうか。

全5曲を通して見てみますと、やはり第1番がずば抜けているように思われます。どの曲も基本的には行進曲とトリオという構成で、多くの場合コーダにトリオの主題が現れる、という形をとっておりますが、行進曲にしてもトリオにしても、第1番の水準に達している曲はなさそうです。
とはいえ、素朴な哀感をもった第2番や、明るく精気に満ちた第4番など、忘れ去るには惜しい曲が含まれていないわけではございません。

ここでは「威風堂々」の全曲を、ピアノ独奏曲として演奏してみることにいたしました。
編曲者は第1番から第4番まではシュミット(Adolf Schmid;1868〜1958)、第5番はヘリ―=ハッチンソン(Victor Hely-Hutchinson;1901〜1947)という2人でございます。
エルガーの豊麗なオーケストレーションの妙味は当然ながら失われておりますが、その点はご了承願います。


第1番ニ長調(No.1 in D major, Op.39-1) 
第2番イ短調(No.2 in A minor, Op.39-2) 
第3番ハ短調(No.3 in C minor, Op.39-3) 
第4番ト長調(No.4 in G major, Op.39-4) 
第5番ハ長調(No.5 in C major, Op.39-5) 

「威風堂々」作品39・全曲連続再生 

◇あそびのエトセトラに戻ります◇
◇編曲:A. シュミット/V. ヘリー=ハッチンソン ◇MIDIデータ作成:Jun-T ◇録音:jimma