ドヴォルザーク/ユーモレスク 作品101
(Antonín Dvořák : Humoresken, Op.101)

1892年から95年にかけて、ドヴォルザークはニューヨークのナショナル音楽院の院長職にありました。このおよそ3年間に及ぶアメリカ時代はドヴォルザークの円熟期・最盛期に重なっており、今日傑作・佳作とされる多くの作品が集中的に生まれております。代表的なものはホ短調交響曲(新世界)とチェロ協奏曲ですが、その他にもヘ長調の弦楽四重奏曲(アメリカ)や変ホ長調の弦楽五重奏曲、ヴァイオリン・ソナチネ、ピアノのための組曲(アメリカ組曲)、「聖書の歌」などがございます。
ピアノのための小品集「ユーモレスク」は、こうしたアメリカ時代の作品のひとつで、1894年に作曲されました。
この年の夏、ドヴォルザークは5ヶ月の休暇をとって故郷のボヘミアに帰り、ヴィソカーの別荘で家族とともに満ち足りた日々を過ごしておりました。
この休暇中の7月に、アメリカで書き溜めた楽想を用いてピアノの小品を書き始めたドヴォルザークは、およそ1ヶ月後に8曲から成る小品集を完成し、「ユーモレスク」と名づけて楽譜出版のジムロック社に送りました。作品はすぐに出版されましたが、変ト長調の第7曲が爆発的にヒットし、ジムロック社ではこの曲を単独で様々なアレンジを施して出版し、大儲けをしたようでございます。
第7曲はヨーロッパのみならず全世界で人気となり、その後も演奏され続け、今日では誰もが一度は耳にしたことのある超有名曲となっております。

上記のように、第7曲のみがとてつもなく有名な「ユーモレスク」ですが、聴いてみれば全8曲それぞれに面白味がございます。ペンタトニック(五音音階)やシンコペーションのようなアメリカの民俗音楽の要素の導入や、曲によってはかなり大胆な和声進行が見られるなど、興味深い点も少なくありません。

そのような次第で、「あそびの音楽館」では有名な第7曲だけでなく、「ユーモレスク」全曲を掲載してみることにいたしました。
お楽しみいただければ幸甚です。


ユーモレスク 作品101・全曲連続再生 

第1曲/変ホ短調:ヴィヴァーチェ(I. es-moll, Vivace) 
第2曲/ロ長調:ポーコ・アンダンテ(II. B-dur, Poco andante) 
第3曲/変イ長調:ポーコ・アンダンテ・エ・モルト・カンタービレ 
   (III. As-dur, Poco andante e molto cantabile)
第4曲/ヘ長調:ポーコ・アンダンテ(IV. F-dur, Poco andante) 
第5曲/イ短調:ヴィヴァーチェ(V. a-moll, Vivace) 
第6曲/ロ長調:ポーコ・アレグレット(VI. B-dur, Poco allegretto) 
第7曲/変ト長調:ポーコ・レント・エ・グラツィオーソ 
   (VII. Ges-dur, Poco lento e grazioso)
第8曲/変ロ短調:ポーコ・アンダンテ(VIII. B-moll, Poco andante) 

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◇MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma