ドビュッシー/夜想曲
(Claude Debussy : Nocturnes)

ドビュッシーは20世紀音楽の扉を開いた作曲家としてきわめて重要な人物でございますが、意外にも演奏会用のオーケストラ曲に関しては寡作と申してよく、世間的な出世作となった「『牧神の午後』への前奏曲」以降、ピアノ小品の編曲や協奏的なものを除くと、管弦楽のために書いた作品は僅かに4作(「夜想曲」、「海」、「遊戯」、「管弦楽のための映像(ただし、第3曲「春のロンド」を除く)」)を数えるに過ぎません。
にもかかわらず、管弦楽の作曲家としてのドビュッシーの存在は非常に大きく、特に「牧神」「夜想曲」「海」および「イベリア(「管弦楽のための映像」の第2曲)の4曲は、この音楽家のオーケストラのパレットがいかに豊かで訴求力に満ちたものであったかを雄弁に物語っております。

「夜想曲」は1897〜99年、ドビュッシー35歳から37歳の年にかけて書かれた作品でございます。最初の着想は1892年に遡り、1894年には独奏ヴァイオリンと管弦楽のために書き進められたものの、1897年になって構想を改め、ようやく最終的な形が確定されました。最初の着想から数えれば作曲期間は7年に及び、管弦楽作品としてはドビュッシー最初の大作と申せましょう。
全曲は3つの曲で構成され、幽玄な「雲」、躍動的な「祭り」、神秘的で妖艶な「シレーヌ」と、5年前の「牧神」と比較しますと表現の幅がたいへん大きくなっていることが感じられます。
ドビュッシーはこの時期、オペラ「ペレアスとメリザンド」に取り組んでおりまして、創作力は初期の絶頂期にあったと推察されます。「夜想曲」は管弦楽の分野での初期の総決算であり、より広大豊麗な中期の傑作、「海」への道を切り拓いた重要作と申してよろしいかと存じます。

1909年頃、ドビュッシーの後輩ラヴェルはこの曲を2台のピアノのために編曲いたしました。ドビュッシーの原曲をラヴェルが編曲するというとてつもなく贅沢なコラボレーション、お楽しみいただければ幸いでございますm(__)m


「夜想曲」・全曲連続再生 

第1曲:雲 (I. Nuages) 
第2曲:祭り (II. Fêtes) 
第3曲:シレーヌ (III. Sirênes) 

◇あそびのピアノ連弾に戻ります◇
◇背景画像提供:自然いっぱいの素材集
◇編 曲:M. ラヴェル ◇MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma