ベルリオーズ/幻想交響曲 作品14
(Berlioz : Symphonie Fantastique, Op.14)

Berlioz ベルリオーズは19世紀ロマン派音楽における最大の作曲家の一人ですが、その作風のあまりのユニークさから毀誉褒貶にさらされ、主要作品の多くが本来の姿で演奏されるようになったのは、おそらく20世紀の後半になってからと思われます。
そうした中、初演以来変わらず愛好され続け、現在でもオーケストラのレパートリーとして演奏されているのがこの幻想交響曲でございます。
ベルリオーズの多くの作品が知られるようになった今日でも、幻想交響曲の音楽的価値は少しの衰えも見せておりません。

幻想交響曲の作曲の経緯については一般によく知られておりますので、ここでは省略させていただきますが、このような文学的内容を音楽化した特異な交響曲が、ベートーヴェンの没後わずか3年の1830年という極めて早い時期に現れたことには驚嘆を禁じえません。
ベルリオーズはベートーヴェンの交響曲(とりわけ「英雄」や「田園」)に接して大きな衝撃と霊感を得ており、ベートーヴェンの交響曲が潜在的にもっていた標題音楽の可能性を大胆に掘り起こしたということはいえるかもしれませんが、そこにベルリオーズ独自の文学愛好的傾向が加わって、音楽をベートーヴェン的普遍性からロマン的特殊性の方向へ大きく推進させたのでありましょう。
大規模な管弦楽編成、「イデー・フィクス」あるいは「固定楽想」の使用、特殊な演奏技術の採用、文学的ストーリーに沿った楽章構成など、後のリストやワーグナー、あるいはロシアの作曲家たちの標題音楽に通じる要素はすべてこの1作の中に胚胎しております。実際、リストの「ファウスト交響曲」「ダンテ交響曲」、チャイコフスキーの「マンフレッド交響曲」やリムスキー=コルサコフの「シェヘラザード」などは、幻想交響曲なしでは生まれなかったと申しても過言ではありません。

「ある芸術家の生涯からのエピソード」というサブタイトルをもつ幻想交響曲は5つの楽章で構成されておりますが、ベルリオーズのプログラムによれば第1楽章から第3楽章までは主として現実世界の物語、その後の第4、第5楽章がアヘン自殺を図った主人公が死にきれずに見る悪夢、すなわち幻想世界の描写となります。恋人を表現する「イデー・フィクス」は第1楽章のアレグロ部分の主要主題として登場、その後の楽章でも要所要所に姿を現します。
第2楽章にスケルツォやメヌエットの代わりにワルツを使用したり、第4楽章に行進曲を挿入した上、極めてグロテスクな狂乱の音楽で終楽章を締めくくったりと、当時としてはとてつもなく斬新な音楽だった「幻想交響曲」ですが、初演から大きな話題を呼び、評判もよく、ベルリオーズの最初の成功作となりました。

「あそびの音楽館」では、この曲をピアノ連弾用にオットー・ジンガー(2世)が編曲したものを公開することにいたしました。お楽しみいただければ幸甚でございます。


幻想交響曲 作品14・全曲連続再生 

第1楽章/夢、情熱(I. Dream, Passons) 
第2楽章/舞踏会で:ワルツ(II. At a Ball : Valse) 
第3楽章/野の風景(III. Rural Scenes) 
第4楽章/処刑台への行進曲(IV. March to Execution) 
第5楽章/サバトの夜の夢(V. A Sabbath-Night's Dream) 

◇「あそびのピアノ連弾」に戻ります◇
◇編 曲:O. ジンガー ◇MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma