ベートーヴェン/交響曲第2番 ニ長調 作品36
(Beethoven : Symphony No.2 in D major, Op.36)

第2交響曲は1800年に着想され、1802年に完成しておりますが、難聴が進んだこの頃はベートーヴェンにとって試練の時で、「ハイリゲンシュタットの遺書」に見られるように精神的に追いつめられておりました。
Beethoven 新進作曲家として将来への希望が大きく膨らんでいた時期に襲いかかった聴覚異常。並の人間なら、世を儚んで自殺するか、死なないまでも悲観の中で人生を投げ出しそうな状況ですが、ベートーヴェンの場合は、まるで苦境をバネにするかのように、創作力が飛躍的に高まっております。
1801年から翌年にかけて書かれた作品をざっと眺めてみても、「月光」や「テンペスト」を含む6曲のピアノソナタ、「春」やハ短調を含む4曲のヴァイオリン・ソナタ、バレエ「プロメテウスの創造物」、ヴァイオリンとオーケストラのためのト長調のロマンス、そして第2交響曲と、溢れんばかりの創作意欲でございます。
さて、第2交響曲は第1交響曲とともに、ベートーヴェン初期の作としてひとくくりにされるきらいがございます。しかしながら、この作品は、2年前の第1と比較して長足の進歩を示しており、この時点でのベートーヴェンの最良の作のひとつと申してよいほどだと思われます。
両端楽章のコーダの拡張は後年の4部構成ソナタを明確に示しておりますし、スケルツォと明記された第3楽章、巨人の哄笑のような終楽章は、まさしくベートーヴェンの音楽そのものでございます。なにより、その大きさは当時の交響曲としては前代未聞と申してもよろしいのではないでしょうか。
2年後に現れた第3交響曲「エロイカ」があまりにも巨大で独創的な作品であったため、第2交響曲はその影を薄くしておりますが、単独の作品として見る場合、この曲はなかなかに捨てがたい魅力をもっているものと思われます。

「あそびの音楽館」では、この曲を2台ピアノ用にJun-Tが編曲したものを公開することにいたしました。
原曲の趣きを再現するにはまことに貧弱なアレンジではありますが、万が一お楽しみいただければ幸甚でございます。

(2015.8.27〜9.11)

交響曲第2番ニ長調 作品36・全曲連続再生 

第1楽章/アダージョ・モルト ― アレグロ・コン・ブリオ(I. Adagio molto - Allegro con brio) 
第2楽章/ラルゲット(II. Larghetto) 
第3楽章/スケルツォ:アレグロ(III. Scherzo : Allegro) 
第4楽章/アレグロ・モルト(IV. Allegro molto) 

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◇編 曲・MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma