カゼッラ/〜〜風に 作品17
(Alfredo Casella : À la manière de...., Op.17)

アルフレード・カゼッラは、レスピーギ、マリピエロ、ピツェッティらと同世代のイタリアの作曲家で、それまでのオペラ中心のイタリア音楽界に、近代的な器楽曲の分野を開拓するとともに、忘却されかかっていたヴィヴァルディの作品の復興に尽力した人でございます。
パリ音楽院に学び、当時の音楽の中心地であるパリでワーグナーやドビュッシーをはじめ、マーラー、シェーンベルク、ストラヴィンスキーなどの洗礼を受けて、非常に多彩で幅広い書法を身につけ、第1次大戦前後から第2次大戦の頃まで、イタリア現代音楽の代表者の一人として活躍したようでございます。

「〜〜風に」は、1910年頃から1914年頃までに書かれた模作を集めて発表したもので、創作態度としては「あそび」の要素が大きいかと思われますが、ちょうど和歌の技法である「本歌取り」にも似て、興味のある聴き手にとってはなかなかに面白い試みかと存じます。
この曲集は2集から成り、取り上げられた作曲家は10人、そのうち発表時に存命だったのは5人でございますから、現代ならば著作権の関係でひょっとしたら裁判沙汰になりかねない状況でございますが、さすがにこの時代はおおらかだったのでございましょう。自作の引用やデフォルメに腹を立てる人もなく、ラヴェルなどは面白がって第2集に参加するほどでございました^^

10曲のうちカゼッラが作曲したのは8曲、あとの2曲はラヴェルの手に成るもので、各曲には対象とした作曲家名とともに、以下のようなちょっとしたサブタイトルが付けられております。これらのサブタイトルは、中にはふざけたものもございますが、単に曲の形態や性格を表すだけでなく、曲によっては出典となる作品を暗示している場合もございます。

  ワーグナー風に(第3幕への導入)
  フォーレ風に(無言歌)
  ブラームス風に(間奏曲)
  ドビュッシー風に(劇の準備のための休憩時間)
  リヒャルト・シュトラウス風に(厄介な交響曲)
  フランク風に(アリア)
  ダンディ風に(苦行者の午後への前奏曲)
  ラヴェル風に(アルマンゾ、またはアデライーデの結婚)

なお、以下の2曲はラヴェル作でございます。

  ボロディン風に(ワルツ)
  シャブリエ風に(グノーのアリアによるパラフレーズ)

ここでは、カゼッラ作の8曲を取り上げております。それぞれの作曲家の作風に馴染んでおられる方には、聴いているうちに思わずニンマリとしてしまう瞬間もあるのではないでしょうか。


  〜〜風に 作品17(ラヴェル作の2曲を含む)・全曲連続再生 

 ワーグナー風に(Richard Wagner - Einleitung des 3. Aufzuges) 
 フォーレ風に(Gabriel Fauré - Romance sans paroles) 
 ブラームス風に(Johannes Brahms - Intermezzo) 
 ドビュッシー風に(Claude Debussy - Entr'acte pour un drame en préparation) 
 リヒャルト・シュトラウス風に(Richard Strauss - Sinfonia molestica) 
 フランク風に(César Franck - Aria) 
 ダンディ風に(Vincent d'Indy - Prélude à l'après-midi d'un Ascète) 
 ラヴェル風に(Maurice Ravel - Almanzor ou le mariage d'Adelaïde) 

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◇背景画像提供:フリー写真素材Canary様
◇MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma