ヴォーン・ウィリアムズ/ロンドン交響曲
(Ralph Vaughan Williams : A Pastoral Symphony)

「ロンドン交響曲」は「海の交響曲」に続く、レイフ・ヴォーン・ウィリアムズにとっては2番目の交響曲でございます。ただし、「海の交響曲」が4楽章制の交響曲的構成をもちながら、実質的にはカンタータふうのものであったのに対し、「ロンドン交響曲」は純粋に器楽のために書かれているという意味では、これがヴォーン・ウィリアムズ最初の本格的交響曲と申してもよいかもしれません。

はじめ、ヴォーン・ウィリアムズはロンドンを描く交響詩を構想、実際に作曲も開始していたようです。それを耳にした友人のバターワース(George Butterworth ; 1885〜1916)が、そのアイディアを交響曲に拡大するよう熱心に説いたことが「ロンドン交響曲」作曲のきっかけになりました。
この交響曲は1912年、「海の交響曲」完成の2年後に着手され、翌年には完成しております。「海の交響曲」におよそ7年ほども費やしたヴォーン・ウィリアムズにしては、かなりのハイペースで出来上がった作品と申せましょう。
1914年の初演はまずまず成功し、続いてドイツで演奏するためにスコアが郵送されたのですが、その直後に世界大戦が勃発したため、初稿は失われてしまいました。幸いに、初演のためのパート譜が残されていたので、これらを基にスコアは再構成されましたが、この際ヴォーン・ウィリアムズはかなり大きな改訂を施しております。ちなみに、この再構成・改訂の際にも、バターワースは大きな助力を与えましたが、まもなくバターワースは出征し、ソンムの戦いで戦死してしまいました。ヴォーン・ウィリアムズはこの友人を偲び、「ロンドン交響曲」を故人に献呈しております。

ところで、当初交響詩として着想されたものの、作曲者自身は「ロンドン交響曲」を標題音楽でなく絶対音楽として作曲したと断言しております。しかしながら、その一方で、各楽章についての標題的な説明なども残しており、厳密に申すなら作品に対する態度に矛盾が見られますが、本音のところは「お好きなように聴いてください」というものだったのではないかと愚考いたします。実際、この曲を耳にいたしますと、がっちり構成された交響曲と申しますより、豊かな楽想と雰囲気で聴かせる音画、といった方が当たっている気がいたします。

以下は、各楽章の説明の要約でございます。
第1楽章:テムズ河畔のロンドンの街の夜明けと大都会の朝の喧騒
第2楽章:都会の郊外の静かな夕暮れ
第3楽章:ノクターン:夜の繁華街
第4楽章:大都会の不安、失業者の行進

この交響曲が作曲される数年前の1908年、イギリス楽壇では大英帝国の栄光を謳歌するようなエルガーの第1交響曲が大ヒットしました。ところがそのわずか3年後の1911年には、当のエルガーが第2交響曲で大英帝国の黄昏を描きます。漠とした不安がヨーロッパ全体を覆っていたのでしょう。「ロンドン交響曲」の、とりわけ後半の不安な感じは、そうした当時のヨーロッパの雰囲気を伝えるものと申してもよいかもしれません。

「あそびの音楽館」では、このユニークな作品を2台のピアノ用にアレンジいたしました。
そもそもこのような作品をピアノで演奏すること自体、あまり意味があるとも思えませんが、まったくの個人的な興味だけでこのような形にしてみました。
原曲の面白味はほとんど残っていない編曲ではございますが、暇つぶしにでもお聴きいただければ幸甚でございますm(__)m

     

ロンドン交響曲(交響曲第2番)・全曲連続再生 

第1楽章:レント ― アレグロ・リソルート(I. Lento - Allegro risoluto) 
第2楽章:レント(II. Lento) 
第3楽章:スケルツォ(夜想曲)アレグロ・ヴィヴァーチェ 
    (III. Scherzo(Nocturne) : Allegro vivace)
第4楽章:アンダンテ・コン・モート ― マエストーソ・アラ・マルチア 
    (IV. Andante con moto - Maestoso alla marcia)

◇あそびのピアノ連弾に戻ります◇
◇背景画像提供:自然いっぱいの素材集
◇編曲・MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma