ヴォーン・ウィリアムズ/ロンドン交響曲 (Ralph Vaughan Williams : A Pastoral Symphony) |
「ロンドン交響曲」は「海の交響曲」に続く、レイフ・ヴォーン・ウィリアムズにとっては2番目の交響曲でございます。ただし、「海の交響曲」が4楽章制の交響曲的構成をもちながら、実質的にはカンタータふうのものであったのに対し、「ロンドン交響曲」は純粋に器楽のために書かれているという意味では、これがヴォーン・ウィリアムズ最初の本格的交響曲と申してもよいかもしれません。
はじめ、ヴォーン・ウィリアムズはロンドンを描く交響詩を構想、実際に作曲も開始していたようです。それを耳にした友人のバターワース(George Butterworth ; 1885〜1916)が、そのアイディアを交響曲に拡大するよう熱心に説いたことが「ロンドン交響曲」作曲のきっかけになりました。 ところで、当初交響詩として着想されたものの、作曲者自身は「ロンドン交響曲」を標題音楽でなく絶対音楽として作曲したと断言しております。しかしながら、その一方で、各楽章についての標題的な説明なども残しており、厳密に申すなら作品に対する態度に矛盾が見られますが、本音のところは「お好きなように聴いてください」というものだったのではないかと愚考いたします。実際、この曲を耳にいたしますと、がっちり構成された交響曲と申しますより、豊かな楽想と雰囲気で聴かせる音画、といった方が当たっている気がいたします。
以下は、各楽章の説明の要約でございます。 この交響曲が作曲される数年前の1908年、イギリス楽壇では大英帝国の栄光を謳歌するようなエルガーの第1交響曲が大ヒットしました。ところがそのわずか3年後の1911年には、当のエルガーが第2交響曲で大英帝国の黄昏を描きます。漠とした不安がヨーロッパ全体を覆っていたのでしょう。「ロンドン交響曲」の、とりわけ後半の不安な感じは、そうした当時のヨーロッパの雰囲気を伝えるものと申してもよいかもしれません。
「あそびの音楽館」では、このユニークな作品を2台のピアノ用にアレンジいたしました。 |