シューマン/ヴァイオリン協奏曲 ニ短調
(Robert Schumann :Violin Concerto in D minor)

1853年は作曲家としてのシューマン最後の年でございます。実際には、翌年初めにライン河に投身自殺を図る前後に書かれたピアノのための「天使の主題による変奏曲」がありますが、これを除けば、シューマンは1853年いっぱいで創作活動を終わったと申してよろしいでしょう。

当時、シューマンはヨアヒム(Joseph Joachim;1831〜1907)と密接に交際しており、この若いヴァイオリニストの才能を高く評価しておりました。そして、ヨアヒムの演奏するベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を聴き、また、ヨアヒムからの勧めもあって、自分でもこのような曲を書こうと思い立ったのでございます。
この曲の作曲経過について、シューマンは日記に以下のように書いております。

9月21日:ヴァイオリンのための作品に着手する。
10月1日:ヴァイオリン協奏曲を書き終えた。ブラームスが来訪(天才だ)。
10月3日:ヴァイオリン協奏曲のオーケストレーションを完成。

上記のように、シューマンはこの協奏曲を2週間足らずで書き上げました。そして、10月7日にはスコアをヨアヒムに送り、独奏ヴァイオリンのパートについて演奏困難な個所についての助言を求めております。
ところが、ヨアヒムはその後この曲のスコアを手元に置いたまま、ついに生涯演奏することはありませんでした。また、未亡人になったクララ・シューマンもこの曲には忌避感をもっており、後年シューマン全集を出版した際にも、この協奏曲が取り上げられることはありませんでした。

ヨアヒムが世を去って30年後の1937年、ヨアヒムの遺品の中からこの曲のスコアが発見され、この年に初演されたとき、曲の完成から80年以上が経過しておりました。
その後、この作品は少しずつ演奏機会も増え、今日ではシューマンの重要作のひとつとの認識も深まってまいりましたが、有名なピアノ協奏曲はもちろん、チェロ協奏曲に比べても演奏頻度は少ないといわざるを得ないと思われます。

全曲は3つの楽章で構成されております。
第1楽章はシューマンには珍しい協奏的ソナタ形式。厳粛かつ重厚な第1主題、上行・下降のアーチ型のメロディラインの第2主題が主要楽想ですが、この第2主題は第2楽章にも現れ、さらに第3楽章の主要主題の構成要素となっており、全曲を統一するモティーフとなっております。
第2楽章は間奏曲的な短い音楽ですが、その主題が「天使の主題」を想起させるため、クララ・シューマンがこの協奏曲を忌避した原因になったとされる楽章です。また、この楽章は特徴的なシンコペーションの音型で始まりますが、この音型は第3楽章で回想され、曲の統一感を高めております。
第3楽章は第2楽章から切れ目なく接続されるロンドで、ちょっとポロネーズふうのリズムをもっております。ちなみに、シューマンのメトロノーム指定は四分音符=63ですが、これはあまりに遅すぎると思われますので、ここではもっと速いテンポで演奏しております。

ピアノ連弾によるシューマンのヴァイオリン協奏曲、お楽しみいただければ幸甚です。


ヴァイオリン協奏曲 ニ短調・全曲連続再生 

第1楽章/力強く、速すぎないテンポで(I. In kräftigem, nicht zu schnellem Tempo) 
第2楽章/ゆっくりと ― 第3楽章/生き生きと、ただし速すぎないように 
    (II. Langsam - III. Lebhaft, doch nicht schnell) 

◇あそびのピアノ連弾に戻ります◇
◇編曲・MIDIデータ作成:Jun-T ◇録音:jimma